広島家庭裁判所呉支部 昭和33年(家)482号 審判 1958年10月13日
申立人 山田敏男(仮名)
未成年者 宮本芳子(仮名)
主文
事件本人の親権者を申立人とする。
理由
申立人は主文同旨の審判を求め、その原因として主張する事実関係は次の通りである。
申立人は事件本人の実父である。申立人は事件本人の生母である亡宮本綾子と昭和二五年頃より内縁の夫婦関係を結び、この関係の継続中綾子は昭和二十六年十二月○○日事件本人を出産し、その後事件本人は申立人及び綾子によつて養育されていたが綾子は申立人との婚姻届未了のまま昭和三十年十月○日病死するに至つた。申立人は昭和三十年十一月○日事件本人を認知し綾子死亡後も引続き養育しておるのであるが、民法六一九条第四項の協議をすることができないので、この協議に代る審判がして欲しい。
当裁判所は記録添付の戸籍謄本の記載及び家庭裁判所調査官高橋昌之の調査報告書の記載を綜合し、申立人の主張する事実関係を真実と認定する。そこで問題となるのは、このような事実関係の下において家庭裁判所が民法第六一九条第五項にいわゆる協議に代る審判により親権者を指定することができるか否かの点である。この点は従来学者実務家の間に種々論議研究せられてきたところであるが、実の父又は母が存し事実上子の監護教育の任にあたつている場合、これらの者を親権者として法律上においても現実と一致させる方が子のために利益であることを否定し得ないし、認知した父ある子の母が死亡した場合を民法第八一九条第五項にいう協議をすることができないときの一場合と観ることも理論上可能であると考えられるので当裁判所は積極説に従い本件申立を理由ありとし家事審判法第九条乙類第七号により主文の通り審決する。
(家事審判官 太田英雄)